その「生物」は宇宙船「エトルリア」に乗り何億光年の距離を旅し、かつて高度な文明が栄えていたと言われている「地球」という星にたどり着いた。「エトルリア」の搭乗員はアメーバ状でドロドロとした気味の悪い薄汚れたひとつの物体であった。地球との衝突でほぼ破壊されてしまった「エトルリア」から這い出てきた生物は地面に降り立つと、アメーバ状の体を地面に押し付けその星の歴史情報を吸収し始めた。
そして、しばらくしてアメーバは「人間」の情報を得て、美しい赤い髪の少女に擬態した。
最初は裸だった。続いて文明情報を読み取り「服」を生み出し、身に纏った。
そして、アメーバは「人間」の素質を持たせた己の分身を7体作り出した。のちに女神と呼ばれる存在たちだ。
生み出された女神はアメーバに
「あなたは私たちのお母様?」
と尋ねた。
「まあ、端的に言えばそういうことになる」
とアメーバは答えた。
「お母様のお名前は?」
アメーバは
「被検体1035」
と名乗った。
女神たちは「うーん」と頭を捻っていたが、ふとした瞬間粉々になった宇宙船の破片に書いてある文字を発見した。
「あれは何と読むのですか?」
そう女神の1人が聞くと「エトルリア」とだけアメーバが答えた。
「エトルリアとは何ですか?」
と他の女神が聞くと
「わたしの故郷から派遣された宇宙船の名前だ」
とアメーバは答える。
それを聞いた女神が
「ではお母様はエトルリアと名乗ってはいかがでしょう!エトルリアに乗ってやってきたのですから!被検体1035ではあまりにも人間味がないでしょう」
「そもそもわたしはこの星の「人間」ではないが……まあいい。便宜上エトルリアと名乗ることにしよう」
アメーバはそう答えるとあちこち噴火が起きていたりクレーターになっている地球を見渡した。
「酷い有様だな。この星の歴史を読み取る限り、どうやら大きな核戦争が起きて星ごと滅亡したようだ」
エトルリアは無表情で淡々という
「解析したデータによるとこの星ではかなり高度な文明が発達していたと言われている。再度そこに住んで文明を発達させていた「人間」を構築してこの星の行く末を観察し、サンプルとして持ち帰ろう」
エトルリアはそういうと両手を大きく掲げて光の玉を作り出した。そしてそれを一気に解き放った。すると、エトルリアが放ったエネルギーは地球をすっぽり覆い尽くし、地形を作り変え、酸素を生み、生物が住むのに最適な環境に作り替えたのだった。
「新たな生命体による新たな文明が築かれるのだからこの星を「地球」とそのまま呼ぶのもおかしいな。そうだ、仮にこの星を「ゼアー」と名付けよう。お前たち7人は「人間」と共存し、その生命体のサンプルを集めるように」
アステリアス暦0年、女神エトルリアにより「ゼアー」が誕生。
「人間」が再構築され、再び文明を発達させていくのであった──